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朝比奈じゅんのひとり言 & SR(SECRET ROOM)
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2009年05月08日00:00
久し振りのブログ小説を書いてみました。
現実なのか空想の世界なのか、ちょっと微妙なお話になっています。
初挑戦、楽しんでいただけるといいのですが…。
では、どうぞ。
急がなきゃ。
早く早くっ!!
遅刻しちゃ~う。
月曜日の朝っぱらから会議なんて一体、誰が決めたのよぉ。
叫んだところで決めたのは、怖~い部長だから文句も言えないしぃ。
早く起きて会社に行けば何の問題もないのだが、昨晩は友達がやっているバンドのライブに顔を出したばっかりにその後、打ち上げに誘われ朝まで飲むハメに…。
お酒臭くないか、それだけが心配なのよ。
うおっ!!ヤバイっ。
会議に遅れるぅ。
急げっ、急げっ。
うわああぁぁぁっっ。
ドーンっ!!
痛ったあ~い。
こんな日に限って慣れないヒールなんぞ履くものだから、思いっきりすってんころりん、尻餅をついた。
―――何で、あたしがこんな目に遭わなきゃいけないの…。
イテテテ。
バッグの中身は飛び出すわ、ヒールは足から脱げてその辺に転がっている。
まぁ、盛大に転んだものの、運良く周りには人通りがなかったのが幸いだろうか。
良かった良かった…と思ったのもつかの間…。
「大丈夫か?随分と派手に転んだもんだ」
バッグの中から飛び出した化粧ポーチにお財布、携帯電話を拾い集める若い男性の影…。
「だっ、大丈夫ですからっ。ほっ、ほっといて下さいっ」
よりによって、男の人にこんな姿を見られるなんて…。
しかし、立ち上がろうにも尾てい骨を打ったからか、思うように体が動かない。
「いいのか?いつまでもそこに座っててて。急いでるんじゃなかったのか」
「はっ」
そうだった。
急いで行かなきゃ、会議に遅れちゃうっ。
「ほら、まず靴を履いて」
「じっとしてろよ。俺様が履かせてやるから」と彼はあたしの足をむんずと掴むと転がっていたヒールを履かせてくれたが、現状を忘れてしまうくらい、まるでシンデレラにでもなった気分。
だけど、俺様って自分で言う?
「足は、ひねってないみたいだな」
決して女性にしては小柄でないあたしをいとも簡単に抱き起こす彼は、間近に見るとかなりの大男。
年の頃は20代半ばくらい?履き慣らしたジーパンにパーカー姿、この時間のオフィス街には似つかわしくない上に口は悪い。
だが、顔はとにかくいい。
パンっ、パンっ。
「痛っ~い。もっと優しくしてよ」
「うるさいな。人に助けてもらって礼はないのか、礼は」
「だって、いきなりお尻を叩くから」
「叩いたんじゃない。親切にスカートに付いた砂をはらってやったんだろうが」
勝負服の一張羅のスーツ、紺色だったおかげで汚れも目立たなかったけれど、仮にも女性のお尻を力いっぱい叩くことはないでしょう。
ただでさえ、打って痛いのに…。
「一人で歩けるか?なんなら、おぶって行ってやってもいいぞ?」
「結構ですぅ」
彼は、ケラケラと声を立てて笑っている。
―――全く、なんて人なの?
そりゃあ、こういう時って一人だとものすご~く恥ずかしいけど、だからってこのBIGな態度はどうなのよ。
ドラマなんかだと、もう少し優しくしてくれるものよね?
「お世話掛けしました。さようなら」
二度と会うこともないだろうから。
っていうか、会いたくないわよね。
時計を見れば会議が始まる10分前、急がなきゃっ。
◇
ツイていない日というのは、どこまでもツイていないもの。
遅刻こそしなかったものの、企画はボロボロ…こてんぱんに打ちのめされて、挙句の果てに後輩にいいところを持っていかれるなんて…。
コンビニ弁当を買って一人寂しく家路に着く…。
「あぁ~あ。こんな時に優しく慰めてくれる素敵な彼氏がいたらなぁ」
ニセモノでも何でもいいから、素敵な彼氏に今のあたしを『よく頑張ったね』って褒めて欲しい。
「実際、そんな男性(ひと)なんていないんだけどぉ」
「若い女の子がブツブツひとり言を言うようになったら、お仕舞いだな」
ケラケラと笑う男が約一名、あたしの顔を覗き込んでいる。
「は?!」
―――なっ。
またしても、あの男登場!!
今朝も会社の近くで会ったのだから再会も珍しいことじゃないのかもしれないけど、だからといってこうもタイミングよく現れると運命?を感じる―――わけないでしょっ!!
「何よっ、性懲りもなく人の前に」
「そういうこと言うか?今朝は俺様のおかげで会議に遅刻しなかったんだろう。企画が通らなかったのは、あんたのせいじゃない。あの部長に見る目がなかっただけだ。今回は後輩に譲ったとしても、今度はあんたが勝つさ。俺様が保障してやる」
相変わらず態度がデカイけど、会議のことも企画が通らなかったことも、どうして初対面のこの人が知ってるわけ?
「何で、あなたがそんなことまで知ってるの?」
「あ?そりゃあ、あんたのことなら何でも知ってるさ」
「知ってるって…もっ、もしかして…ス、ストーカー!!」
―――このあたしにストーカー?!
ありえない話だけど、こんなことまで知ってるなんて…。
ど、どうしよう…。
「うっ、ぎゅ…△%☆※□…」
―――離せぇ、警察呼ぶぞぉ。
「こらっ、大声出すなよ。っつうか、誰がストーカーだ。一人で泣いてんじゃないかと心配して来てやったのに」
口を塞がれ、羽交い絞めにされて手足をバタつかせるあたしを大男は宥めるように耳元で囁く。
その声は反則だ。
「え?」
「まっ、クヨクヨすんな。地球の裏側まで行っちまうくらい落ち込むけど、一晩でケロっと忘れるのがあんたのいいところだろ」
「それ…褒められてるの?」
「十分褒めてるだろ」
「ねぇ、そのわりに何でそんなに態度が大きいわけ?」
「俺様だから」
わかんないけど、この男性(ひと)といると、さっきまでの暗い気持ちが一気にどこかに吹き飛んでしまう気がする。
「心配して来てくれたんだったら、もう少し優しくしてよ」
「仰せのままに女王様」
+++
次の日、目が覚めると彼の姿はなく、夢だったのか現実に起こったことなのか、それすらわからなかったけれど、彼の言葉はあたしの心の中に残ってる。
「え~突然ですが、前部長は都合により昨日付けで退職されましたので、後任を紹介します」
―――えっ、退職?新しい部長?
部長交代の話など誰も聞いていなかったから、突然のことにどよめきが湧き上がる。
「急な人事で戸惑っている方もいらっしゃると思いますが、本日付で部長になりました一里山 隆(いちりやま たかし)です。みなさん、よろしくお願いします」
―――俺様男が、何で部長?!
何度も目を擦ってみたり、ほっぺたを抓ってみたりしたが、やっぱり目の前にいるのは彼に間違いない。
だけど、どうして…。
「潮田 紗耶香(しおた さやか)さん、よろしく」
あの笑顔は、正しく…。
To be continued...
お名前提供:一里山 隆(Takashi Ichiriyama) … yukino さま
お名前提供:潮田 紗耶香(Sayaka Shiota) … 若菜 さま
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