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コメント[ 0 ]TB[ ] 2010年04月07日00:00
続きですが、ものすごく短いですっ。(それに中途尾半端で終わってますし…)
それでも、よろしければ。
本日はひとり言はおもしろいお話がないので、お休みします。




あれからずっと部屋の中に篭ったきり出て来ないが、もう寝てしまったのだろうか?
廊下をウロウロしているあたり、既に怪しいヤツと化していた椎名だったが、どうにも彼女のことが心配で仕方がない。
というか、何かをやらかしそうで気が気でないのだ。

『あの…こういうのは初めてなんですけど、私にもできるでしょうか』

不意に話し声が聞こえ、どこかに電話を掛けているのだろうか?
椎名は片耳に手を添えてドアにピッタリと貼り付けた。

『年齢は24歳です。え?スリーサイズですか?』

スリーサイズって。
おいおい、どこのどいつと話してるんだ。

『87-59-88。えっ、何カップか?』

何々?87の59って、見た目以上にナイスバディの持ち主だったか。
なんて感心している場合じゃない。
まさか、いかがわしい店にでも出入しようとしてるんじゃあるまいな。

『一応、Cカップで───』

バーンっ。

ドアが開いたと同時に勢いよく突然入って来た彼は、ベッドの上でハートマーク柄のパジャマに身を包み、アヒル座りしていた可恵の手からいきなり携帯電話を奪い取ると「すみません。この話はなかったことに」そう言って有無も言わさず電源ごと切った。

「バカもんがっ!!何も知らないお嬢が、なんつーところに電話を掛けてるんだっ」

バカもんって、あなたにそこまで言われる筋合いないわよ。
その前に勝手に部屋に入らないでっ、不法侵入で訴えるからっ。
可恵は少しの間、無言のまま鋭い視線で睨み返す。

「バカもんって、あなたは何様よ。ここは私の部屋です。勝手に人の部屋に入らないで」
「だから、鍵を掛けろと言っただろうがっ」

逆ギレしてどうする。
どう考えても矛盾しているが、この際、危ない道に逸れないよう正す方が先決だ。
それにしても、お風呂に入ったのだろう髪にはタオルを巻いて、すっぴんだったが、それがまた妙に色っぽかったりもして。
相当、僕の頭の中もいかれはじめているようだ。

「どこに掛けてたんだ?怒らないから正直に言ってみろ」
「怒ってるじゃない」

「あのなぁ」それ以上言葉が続かず、椎名は髪をガシガシとかき上げながら、どっかとソファーに腰掛けた。

「怒ってないから」

ウソばっかり、目が怒ってる…。

「キャバクラ」

正直に言ってみろというから言ったのにこの落胆ぶりはなんなのか。
いくら求人誌を見たって、未経験者が何をやっても勤まるはすがない。
両親が知ったら、どんなに嘆くことだろう。
とはいったって、適当に嫌なやつでもほんのちょっと我慢すれば、手っ取り早くお金が入るこの仕事しかないでしょう。
でなきゃ、こんな居候生活から抜け出せやしないんだから。

「アホか」
「バカの次は、アホ呼ばわり?」
「だって、そうだろう?仕事なんてしたことないヤツが、安易に考えそうなことだっての」
「勝手に決めつけないで。どうして、やったことないなんてわかるのよ」
「あ?それは」

彼女からは一切素性を聞いていないことになっているのを危うく忘れそうになった。
ホテル王のお嬢様だと知っていることは、もう少し伏せておかなければ。

「見ればわかる。僕を誰だと思ってるんだ」

誰って、お金持ちの傲慢男でしょ?
心の中で悪態をつく。
ふんっだ。


To be continued...

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コメント[ 0 ]TB[ ] 2010年04月04日20:46
「これからは、一人で生きて行くから。もう、お父さんの世話になんか、一円たりともならないわよっ」

なんて、大見得きって家を出たはいいけれど…。
偉大な父親の元で何不自由なく育った私が、何もかもを振り捨ててしまった今、一人でなんてどうやって生きて行くというのだろうか。
何の取り柄もないお嬢様がどれだけ甘やかされて両親におんぶにだっこしてきたのか、今更後悔しても遅いのだが、決心したからにはやれるところまで頑張らないと。
負けを認めるのはまだ早い。
たった今、スタートラインに立ったばかりなのだから。

「まず、住むところを探さなくっちゃ」自分に言い聞かせるようにひとり呟くと、可恵(かえ)は不動産屋を探すことにした。

「高いなぁ。ワンルームなのに8万も9万もするなんて」

店先の窓ガラスに貼ってあった物件を端から順に眺めながら、大きく溜息を吐いた。
たいして貯金をしていなかったというか、する必要もなかった環境にいたのだから仕方がないが、手持ちは悲しいかな、ビビたるもの。
この際、雨風しのげるところならどんな家だっていい。
形振り構っている場合ではないのだ。

「あの、すみません」

「できるだけ、安いアパートないですか?」自動ドアを抜けて店内に入ると、30くらいと思われる男性が怪訝そうに可恵を上から下まで嘗め回すように見つめる。
いらっしゃいませのひと言もない上に偉そうに座っているだけでも腹立たしいのに、この失礼な態度は何なの!!

「あの、聞いてます?安いアパート───」
「何度も言わなくても聞こえてる。君の声は、ただでさえデカイんだから」

大きい声は生まれつきなの、悪かったわねぇ。
だいたい、聞こえているんだったら、つべこべ言ってないで早く質問に答えなさいよ。
カウンターの空いていた席にワザとドカッと大げさに座る。
何て傲慢な男なの。
そう思いつつも、彼から目が離せないのは、今まで会ったどの男性よりも男らしくてそれでいてセクシーな魅力に溢れているからだろう。
見るからに育ちの良さを感じさせる風貌が、余計にこの職場に似つかわしくない。

「だったら、早く探してよ。住むところがないんだから。あと敷金礼金、保証人なし、今日からでも住めるところね」
「あのなぁ。今どき、そんな家がどこにある。仮にあったとしても、君みたいな女性が住むようなところじゃない」
「私みたいなって、どういう意味?」
「そりゃあ」

窓の外から食い入るように物件を見ていた彼女に椎名(しいな)が気付かないはずがない。
色を入れたのとは違う色素の薄いブラウンのストーレートヘアは時折吹くそよ風になびいて、まるでボッティチェリのヴィーナスのように見えたのだから。
しかし、口を開けばこれだ。
可愛い顔からは想像もできないじゃじゃ馬娘、とはいっても芯の強さを感じさせる瞳は髪と同じくブラウンで、見つめられれば男なら誰もが一瞬で恋に落ちてしまうに違いない。
だからこそ、いくら安いところと言われても危ない場所に住まわせるわけにはいかないのだ。

「どーせ、何もできない世間知らずのお嬢様とか思ってるんでしょ。あのねぇ、そういうところが男の偏見だって言うの。女は黙って男に養ってもらえばいいみたいな───」
「ちょっと待て。話が逸れてないか?僕が言いたいのはだな」
「もういいです。あなたじゃ話にならないもの。他に人もいないようだし、別の不動産に───」
「あ?別の、そりゃダメだ」

こんなことでは、悪徳不動産に引っ掛かって取り返しのつかないことになるかもしれない。
それなら、いっそ。

「いい物件があるよ。君にピッタリの」
「ほんと?」
「あぁ。物件は六本木駅から徒歩5分」

「六本木?徒歩5分?」そんな場所に私が住めるような安アパートがあるとは到底思えないんだけど。
さっきの笑顔が一気に萎み、代わって怪訝そうな顔で椎名を見つめ返す。

「ただし、君一人で住むんじゃないんだ。同居人がいる。キッチンは共同だが、ジャグジー付のバスとトイレは君専用に部屋に備え付けてある。敷金礼金、保証人も希望通り、なしでいい。家賃はそうだな、交渉次第では家事全般をこなしてくれれば、タダにしてもいい」
「たっ、タダ?」

「あぁ」頷く彼に再び可恵の顔に笑みが戻った。
しかし、同居人がいる上にやったこともない家事をするなんて…。
でも、六本木という土地に加え、ジャグジー付のバスとなるとかなりの部屋が期待できそうだ。
それに何より、家賃がタダ。
同居人がいようが、例え人間が食べられるかどうかわかわない食事しか作れないとしても進化したこの時代なら何とかなる、これ以上魅力的な話がどこにあるっていうの。

「見せてもらってもいい?」
「もちろん」

彼は立ち上がって可恵の手を取り、入口にCLOSEの看板を下げて外に出ると止めてあった白いメルセデスに乗り込み静かに走り出す。
この人は、一体。
急に不安に駆られたが、なぜか信じていいような気がしたのは傲慢で俺様だけど、目がとても綺麗だったから。
暫く車を走らせ、一際目立つマンションの地下駐車場に車を滑らせる。

「おい…」

無防備なんだよ。
たいした時間じゃなかったはずなのに余程疲れていたのだろうか、気持ち良さそうに寝息を立てながら眠っている。
すっと通った鼻筋、閉じていてもクルンとカールしている長い睫毛に艶やかで柔らかそうな唇。
何より、思わず触れたくなるような滑らかな肌。
よりによって、こんな子を連れて来るなんて。
彼女を守った気になっていたが、実は自分が彼女にとって一番危険な存在になろうとしているのではないだろうか。
しかし、最終的に決めるのは彼女なのだ。
どこまで紳士でいられるか、この誘惑に勝てる自信は全く持ってなかったが…。

「おい、起きろ。着いたぞ」

肩を揺すってようやく目を覚ます。

「もう?」

さっさとシートをベルトを外して運転席を降りた彼は、助手席のドアを開け、ぐずぐずしている可恵のシートベルトを外すと彼女の腕を掴んで引っ張り出した。

「寝てたから外観を見てないだろうけど、部屋はこのマンションの最上階にある。荷物はそれだけか?」

可恵が家から持って出たのは最小限の荷物だけ、ブランド物のきらびやかなドレスやバッグ、宝石はもういらない。
椎名は彼女からバッグを取るとゆっくり歩き出した。
エレベーターの中ではずっと押し黙ったまま、ひたすら数字が最上階に移動するのを目で追っていた。
扉が開くと正面には3001と書かれた札の付いた重厚なドアが一つあるだけ。
彼がポケットからキーを出して開ける。

「ここは、誰の家なの?」
「話は中に入ってからだ」

言われるままに背中に手を添えられて中に入ると大理石の玄関ホール、マンションに住んだことがない可恵だったが、こんなに広い家だったとは。
そういえば、この階にはドアが一つしかなかったということは、フロア全体がこの家の持ち主ということになる。
専用のバストイレが部屋に備え付けてあると言っていたのも頷けた。
奥の部屋に入るとそこは何十畳あるかわからないほどのリビングルームになっていたが、前面ガラス張りで都内が一望できる素晴らしい景色が広がっていた。

「わぁ、すごーい」
「だろ?自慢の景色だ。晴れた日は富士山も見えるし、夜景はまた格別だな」

世界は自分の物だと思えるこの空間が、椎名にとっては何より落ち着ける城だった。
だからこそ、女性を簡単に入れることなどなかったのに、名前すら聞いていない見ず知らずの彼女を連れて来て、挙句住まわせようとしている自分に驚かずにはいられない。

「僕の名前は椎名 翠(しいな みどり)、この家の持ち主だ」
「えっ、この家の持ち主って…」

窓から景色を眺めていた彼女が反射的に振り返った。
日に照らされて、髪がキラキラと輝いている。

「君の部屋はこっちだ」

余計な説明は抜きだといわんばかりに彼はリビングを出て行く。
何部屋あるのかわからないが、付いていかないと迷子になるだろう。
廊下を通って2個目のドアを開けると10畳ほどの部屋があって大きなベッドとソファが置いてあった、横に付いているドアの奥にはジャグジー付のバスとトイレ、洗面所がある。
この部屋も一面ガラス張りで、まるでホテルの一室を見ているような感じだろうか。

「ここが君の部屋。その顔は、何か言いたそうだな」
「ねぇ、えっと椎名さん。どうして、私をここに住まわせようと考えたの?あなたはてっきり、あの不動産屋さんの人だと」

まさか、この人と一緒に住むことになろうとは…。
てっきり、あの不動産屋さんの人だとばかり思っていたが、どう見ても客を迎える態度ではなかったし、同居人が男性だと考えなかった私が悪いのかもしれない。
家事全般をこなせば家賃をタダにしてもいいなんて、虫のいい話が世の中にあるはずがない。
これじゃあ、父の思う壺。

「一応、僕はあの不動産屋を所有してるんでね。他にも、いくつか会社を持ってるんだ」

だから、こんなすごいマンションにも住めるわけね。
彼は父と同じ、全てを持っている。
いつだって女は男の所有物、思い通りになると思ったら大間違いよ。

「そう。すごい、お金持ちなのね。だから、女の一人や二人、自宅に囲っても大したことないってわけ」
「どうしてそうなる」

冗談じゃない。
別に囲おうなんて気持ちは毛頭ないし、慈善事業をやろうってわけでもない。
家賃を払いたいというなら払えばいい。
希望通りの部屋を用意してやったじゃないか。

「家事全般で、この家に住まわせるなんて。愛人にでもするつもり?」
「僕は嘘を言ってはいない。君が家賃を支払うというのならそれでもいい。別に取って食おうとか思ってるわけじゃないさ。言っておくが、僕は君の素性も知らないどころか、名前すらわからないのにこの場所を提供しようとしているんだ。ありがたいと思ってもらわないと困るな」

「よく考えるんだ。決めるのは君だから」パタンとドアが閉まり、可恵は一人残された。
何が、『ありがたいと思ってもらわないと困るな』よ。
偽善者ぶって。
ベッドの上に勢い良く仰向けでダイブする。
今朝まで眠っていたような、スプリングが効いた寝心地の良いベッドだ。
安いボロアパートに住んで、慣れない仕事を見つけて。
所詮、一人で生きて行くなんて無謀だったとわかっている。
こんなベッドで眠ることなんて、悔しいけど、一人じゃどんなに頑張ったってできるわけがない。

「腹減ってないか」

「あのなぁ」大きな溜息が部屋に響く。
ベッドの上で子犬のように丸くなっている彼女を見れば、溜息も出るというものだろう。
だから、無防備だって言ってんだろ。
何度、この言葉を言わせれば済むんだ。

「おい、風邪ひくぞ」

「おい」揺すっても、ちょとやそっとじゃ起きそうにない。
この子は、どんな家の娘なんだろうか?
随分、切羽詰っているようではあったが、顔立ちといい身なりといい、普通の家庭で育ったとは思えない。
『どーせ、何もできない世間知らずのお嬢様とか思ってるんでしょ。あのねぇ、そういうところが男の偏見だって言うの。女は黙って男に養ってもらえばいいみたいな───』
大方、どこかのお嬢様が父親と喧嘩して引っ込みがつかず、家を飛び出したっていうのがオチだろうな。
椎名は、彼女の頬に掛かっていた髪をそっと指ですくうと耳にかけた。
こんな可愛い娘なら、閉じ込めておこうという父親の気持ちがわかるような気がする。
僕はどうかしてるな。





ガバっ。

「ここ。今、何時?」

見慣れない部屋で眠っていたことに頭がはっきりと回らないが、真っ暗な部屋で窓からは夜景が綺麗に見える。
そうだった。
椎名って人の家に来て、そのまま寝ちゃったんだ。
ここを出るとしたら、今夜はどうしよう。
友達には手が回ってるだろうし、ホテルには。

「やっと起きたか」

急に電気が点いて目が眩しい。

「腹減ってないか?何か外に食べに行くか」
「そういえば、空いたかも」

「じゃあ、支度ってこともないな」出て行く彼の背中に向かって声を掛けたが、何を言いたかったのか、言えばいいのかわからない。
彼女のそんな表情を彼は理解したのだろう。

「とにかく、腹ごしらえが先だ」
「私の名前は小澤 可恵(おざわ かえ)、24歳。えっと」
「リビングで待っていてくれないか」

椎名は廊下を挟んだ向かいにある自分の部屋に行くと後ろ手にドアを閉め、携帯を手に取った。
「至急、調べてもらいたい女性がいる。名前は小澤 可恵。年齢は24歳」手短に話して電話を切るとリビングに戻る。
彼女は窓にへばりついて夜景を見ていたが、まさか…。

少しアルコールを入れたかった椎名は、敢えて車ではなく徒歩で街に出ることにした。
六本木の繁華街に出るには別に車がなくても十分だし、彼女には地理も覚えてもらわなければ。
これは、ここに住むと決めたならの話だが。
どこでもいいという彼女に椎名は行きつけの店に案内した。

「何でも好きなものを頼んでいいぞ。僕の奢りだから」
「いえ。きちんとケジメはつけないと」

こういう反応は、椎名にとってかなり新鮮だった。
食事に誘えば、勘定は男が持つのが当たり前だったからか、男はそうするものだと知らぬ間に身についていたからか。
今となっては、よくわからない。
しかし、もし彼女が自分の知っている人の娘さんだとするならば、意外だったと言わざるを得ないだろう。
そんな時、携帯が震え出す。

「失礼」

椎名は席を立って店の隅で電話に出る。
「やっぱり、そうだったか。悪いが、彼女の父親に僕のところで暫く預かることにするから心配しないようにと伝えておいてくれないか。改めて、こちらから連絡を入れるとも」
思った通り、彼女はホテル王と呼ばれる父を持つ、大金持ちの令嬢だ。
何不自由なく暮らしてきたはずなのに、どうして家を出たりなんかしたのだろうか?
あの性格からすれば、それもわかるような気がするが。

「お仕事の電話?」
「まぁ」
「それとも、彼女かしら?」
「気になるのか?」
「別に」

席に戻ると、頼んであったビールをカンパイもしないうちに一人で半分以上飲み干していた。
相当の酒豪なんだろうか?
言われてみれば、彼女が男の家に行かなかったということは、付き合っている男はいないということ。
もしかして、まだ誰のものにもなっていないとか。
そうだったら、なんて喜んでいる場合じゃないだろう。
父親とは面識があるが、大事な娘を預かっている男が僕で果たして納得するかどうか。
椎名は一人でカンパイの真似だけして、ビールを喉に流し込む。

「特定の彼女は作らない主義なんでね」
「どうして?」
「どうしてって、色々面倒だし」
「面倒だしって、椎名さんはいくつなんですか?」
「僕は30だけど」
「30にもなって家庭も持てない男では、会社のトップになる資格はないでしょう?」

言ってくれるじゃないか。
あぁ、そうだよ。
世の中、まだまだ妻帯者で人を見る風潮は残っているが、だからといって君に言われたくないんだよ。
24にもなって、親のスネをかじっていた君にはね。
でも、それを打破しようとして行動しただけでも自分より上か。

「君だって、金目当てに近付いてくるような相手と真剣に付き合えないだろう?」
「そんな人ばかりじゃないでしょ」
「世の中、甘くないんだよ。身にしみてわかったと思ったが」

今の私のことを言っているのだろう。
確かにそうだ。
可恵だって、お金で近付いて来る男は数知れず。
本当の恋すらまだしたことがないなんて口が裂けても言えないが、だからこそ、運命の相手に出会えることを信じたい。

「どうするんだ?部屋は空いてる、君がいたいだけいればいい。その間に部屋を見つけるも良し、探すのを手伝ってもいい。24にもなれば、親が出てくる問題でもないだろうから」
「私、家事が全くダメなんで。努力はしますけど、家賃はできるだけ払います。少しの間だけ、置いてもらっても。仕事も見つけないといけなくて」

先に仕事を見つけて収入の確保ができなければ、住むところも探せない。
この状況は不本意でないとも言い切れないが、別の意味で運が良かったともいえる。

「それは構わないが、仕事のあてはあるのか?」
「全然」

開き直りとも取れる言い方に本人も呆れつつ、こうなったらクヨクヨ悩んだって始まらない。
なるようにしかならないんdから。

「良ければ、うちで働ける場所を提供してもいいが」
「どうしてそこまで親切なの?あぁ、もしかして、私が可愛いから?」
「あのなぁ、自分で言うか」
「冗談に決まってるでしょ。単に言ってみただけじゃない」

余程お腹が空いていたのだろう。
運ばれた料理を美味しそうに食べる彼女に図星だったなんて、言えるはずがない。
自分にこんな感情が潜んでいたことも驚きだというのに。


BACK/NEXT


お名前提供:小澤 可恵(Kae Ozawa)/椎名 翠(Midori Shiina)… ももび さま


すみませんっ、完結させる予定が長くなってしまいました。
そして、タイトルですが、『恋する男たち』というオムニバスのお話を納めた部屋を作る予定ですので(サブタイトルが付くと思います)、仮の形で申し訳ありません。
少々お待ち下さいませ。
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コメント[ 0 ]TB[ ] 2009年05月19日00:00






ピンポーン
  ピンポォーン

玄関のブザーが鳴り響く。
―――げっ、もう帰って来ちゃったの?
遅くなるとか言ってたわりに早いわよ。
まだ、肉じゃができてないのにぃ。

ピンポーン
  ピンポォーン

「あぁ~っ、はいはい、今開けますって」

スリッパをパタパタとさせながら、紗耶香は急いで玄関のドアを開ける。

「ただいま」
「お帰りなさい。早かったのね」

こんな会話、なんだか本当の夫婦みた~いとか思いながら、彼からカバンを受け取る。

チュっ

―――なっ、チュって、何?チュって…。
いきなり、おでこにチューなんかするから、びっくりするじゃないっ。

「あぁ、面倒だから途中で抜けてきた」

「腹減ったし、早く肉じゃが食いたいしぃ」と申し訳程度のリビングとも言いがたい部屋にあるラブチェアで、ネクタイを緩めながらくつろぐ俺様男。
あぁ~ん、きっちゃな~い靴下、その辺に脱ぎ散らさないでぇ。
―――だけど、面倒だから途中で抜けてきたって…。
いいの?そんなんで。
仮にもあなたはプチョーなのにと思ったが、部長だから許されるのかも。

「美味そう、う~んいい匂い」
「ごめんね。まだ、出来てないの。もうちょっと待ってて。先にお風呂で―――」

『お風呂でも』と言いそうになって、ハっとした。
よく考えたら、この人とは夫婦どころか恋人でもないのにここまでしてあげるのはどうなのよ。
肉じゃがだって、何であたしが作らなきゃなんないわけ?

「風呂?風呂は紗耶香ちゃんと一緒に入るから、後のお楽しみに取っておくよ」
「一緒にって…誰が、あなたと一緒にお風呂に入るの!!」

―――な~にが、後のお楽しみよ。
何を言い出すのかと思えば、一緒にお風呂に入るですって?
そんなわけないでしょっ。
まったくもう。
それに人のことを気安く紗耶香ちゃん、なんて呼ぶなーっつうの。
仕方ないから冷蔵庫から発泡酒、言っておくけど、うちにはビールなんて買える余裕はないんですからね。

「じゃあ、これでも飲んでて」
「0H!サンキュー」

ブシュっ

「ぶはぁっ、仕事の後の一杯は格別だぁ」とか何とか、オジサンみたい。
あたしもあたしなんだけどね、こんな得体の知れない男をのこのこ家に入れて、肉じゃが作ってるなんて…。
だけど、慰めてくれたし、嫌いな部長もどこかへ…って、どこにやっちゃったのよ。
まさか、手に掛けたとか言うんじゃ…。
ひぇ~っ、どっ、どっ、どうしよう…。
キッチンに逃げ込んだものの、箸を持つ手が震えちゃう。
『今夜ゆっくり話そうぜ』って、いよいよ彼の正体がわかるのかしら…。

「いっただっきま~す」

「かぁっ~美味そう。待ち待った、肉・じゃ・が!!」と、まるで愛しい女性(ひと)でも見つめるような甘くとろけそうな笑顔。

「味は、保障しないから」
「大丈夫、見ただけで美味そうだもん」

料理は下手じゃないけど、人に食べさせるようなものは作ったことがないからわからない。
だいたい、これで不味かったりしたら、俺様男のことだもん。
何をするか…。

「どお?」

口にジャガイモを放り込んだまではいいが、無言のままで固まっている。
―――何よ、早く言いなさいよ。
不味いの?不味くないの?

「うっめぇ。紗耶香ちゃんの肉じゃがは、世界一だな」

ふぅ~~っ。
お世辞でもなんでも、こんなに褒めてくれるなら女として嬉しくないはずがない。
俺様男だけど、ムカつくけど、憎めないのよねぇ。

「で?何人の幸運な男が、この肉じゃがを食ったんだ?」
「えっ…」
「まさかぁ、この俺様が初めて?なんてこたあないだろうねぇ。紗耶香ちゃん?」
「なっ、ないに決まってるでしょ。みっ、みんな美味しいって言ってくれたんだからっ」

本当は図星…。
まともに男の人と付き合ったこともないあたしが、手料理なんて振舞う機会があるはずないもの。
だけど、そんなことバカ正直に言えるはずないじゃない。

「そっか、残念。紗耶香ちゃんの一番目になりたかったのになぁ」

「ほんと、うっめぇなぁ。人間ってのは、こんな美味いもんを食ってたんだ」とブツブツ言いながら、美味しそうに肉じゃがを食べている姿を見ると、まるで本物の恋人になった気になってくる。

「ねぇ、人間って。あなたは、何者なわけ?」
「イたたたたたっ、痛ってぇっての。紗耶香ちゃん、そんな…引っ張るなって」

思いっきり、両手で彼のほっぺたをぎゅうって引っ張ってみたが、人間の皮膚と変わりないように思える。
さすが、宇宙人は人間の科学を超えているってことね。
しっかし、よくここまで精巧にできたものだわ。

「この皮を剥いだら、中から宇宙人が出てくるの?」
「出てこねぇって。イててててっ、こらっ、紗耶香ちゃんっ」

顔のあっちこっちを引っ張ってみたが、どこにも継いでいる部分はなさそうだ。
ひとしきり、彼の顔を引っ張ってみたものの、赤くなっただけでつまんな~い。

「な~んだ。宇宙人じゃないんだ。つまんない」
「あのなぁ、俺がいつ宇宙人だって言った?」

「せっかくの男前な顔が台無しだろ」と引っ張られたところを手で摩る彼。

「言ってないけど、人間じゃないんだったら宇宙人しか思いつかなかったんだもん」
「まぁな、人間じゃないっていうのも、あながち否定は出来ないんだけどな」

宇宙人じゃなくて、人間じゃなくもない?
って、何?

「じゃあ、なんなの?」
「驚かない?」
「だいじょぶ」

「あのね、幽霊?」

「ゆうれい?」

ひぇぇぇぇぇぇ~~~~っ、オ・バ・ケ~~~~~~っ。


To be continued...


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コメント[ 0 ]TB[ ] 2009年05月14日00:00

P2009_0513_214610.JPG昨日は会社帰りに100円ショップに寄りまして、←を買いました。
『足ゆびソックス』なるもので、指先は開いているんですが、これがいいんです。
一つ買って良かったので、お洗濯分を含め3個追加購入。
靴擦れで指が化膿して腫れ、会社を休むような店主には、素晴らしい一品なんですよ。
実際は、ムレをなくすというようなものなんですが、試しに靴擦れした靴を履いて行ったところ、絆創膏も貼らずに全然大丈夫でした。
こんな素晴らしいものが100円で買えるなんてぇ。
なんて、便利な世の中なんでしょう。
これで、靴擦れも解消!!
この上にストッキングなどを履かれないと外れてしまいますが、よろしければ是非お試し下さい。
ちなみに男女兼用で、100円ショップで会ったお友達にもオススメしてしまいました。

そして、短いですが俺様騎士(ナイト)。の続編を。
いつも、ひとり言を読んで下さる方へ。

では、どうぞ。



 

 

続 俺様騎士(ナイト)。



何で、あの俺様男が、うちの会社に…。
それに部長が急に退職なんて…怪し過ぎる…。

「ねぇ、ねぇ、一里山さんってデキル男だって思ってたけど、あの若さで部長でしょ?スピード出世一番乗り!!それに独身!!あたし、本気で狙っちゃおうかな」
「ダメダメ。将来の社長とも言われてる上にアレだけいい男よ?並みの女じゃ、相手にされないって」

女子社員のそんな会話が耳に入ってくる。
デキル男に独身?
どうして、みんな知ってるの?
あんな男、うちの会社になんかいなかったじゃない。
だいいち、いい男は認めるけど、俺様だしぃ。

昨日とは打って変わって、悔しいくらいにビシッと決めたスーツが似合ってる。

「みんな。一里山さんのこと、知ってるの?」
「え…潮田さん、どうしたのよ。昨日まで、同じ部の課長だったじゃない」
「え?!」

―――同じ部の課長?!
だって…そんなはず…。
一体、何がどうなって…。

ふと、部長席に視線を向けると、これからの部の運営についてだろうか?他の課長達とも全く違和感なく話をしている。
ということは…あたしの頭がどうにかなってしまったということなのだろうか?
だけど…。

「潮田さん、ちょっと」
「はっ、はい」

いきなり、一里山部長?に呼ばれ、慌てて彼の席へ走る。
さっきの意味深な挨拶といい…これから、どうなってしまうのだろう。

「部長、何か」
「今朝は、一人にさせて悪かった」
「はっ」

―――こんなところで、なっ、何をっ。
慌てて周りをキョロキョロと見回したが、運良く部長席はパーティションで仕切られていたから誰にも会話は聞かれていないよう。

ほっ。

「ちょっとっ、どうしてあなたが部長に成りすましてるのよ。どうやって、取り入ったの?前部長に何したの」
「いっぺんに言われても。っつうか、取り入ったとか、成りすましてるなんてヒドイなぁ。人聞きの悪い」

―――それは、あなたの第一印象がそうだからでしょ?

「前部長が一身上の都合で辞めたのは俺のせいじゃないし、今までの俺の成績からしても妥当だろ」
「あなた、うちの会社になんかいなかったじゃない。突然、現れて…誰なのよっ」

みんなの記憶の中に知らぬ間に入り込んで、魔法使い?いや、世界征服を目論む宇宙人かも?
得体の知れない人に一晩、慰めてもらったとは…。

「紗耶香の記憶だけは、書き換えられなかったんだよな。でも、心配するなって。他のやつらは、記憶が元に戻ることはないからさ」
「心配するなって、記憶の書き換えってどういうことよっ」

―――やっぱり、世界征服を目論む宇宙人かも?!

「まぁ、その話は今夜ゆっくり話そうぜ」
「ゆっくりって…」
「少し遅くなると思うけど、夕飯は家で食べるから」
「ゆっ、夕飯?!」

―――家で食べるって…。
来るの?家に。

「肉じゃがが、いいな。久し振りに人間様のお袋の味?ってのを堪能してみたいから」

人間様って…。


To be continued...


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CATEGORY[ブログ小説]
コメント[ 0 ]TB[ ] 2009年05月08日00:00
久し振りのブログ小説を書いてみました。
現実なのか空想の世界なのか、ちょっと微妙なお話になっています。
初挑戦、楽しんでいただけるといいのですが…。
では、どうぞ。






急がなきゃ。

早く早くっ!!

遅刻しちゃ~う。

月曜日の朝っぱらから会議なんて一体、誰が決めたのよぉ。
叫んだところで決めたのは、怖~い部長だから文句も言えないしぃ。
早く起きて会社に行けば何の問題もないのだが、昨晩は友達がやっているバンドのライブに顔を出したばっかりにその後、打ち上げに誘われ朝まで飲むハメに…。
お酒臭くないか、それだけが心配なのよ。

うおっ!!ヤバイっ。

会議に遅れるぅ。

急げっ、急げっ。



うわああぁぁぁっっ。


ドーンっ!!



痛ったあ~い。

こんな日に限って慣れないヒールなんぞ履くものだから、思いっきりすってんころりん、尻餅をついた。
―――何で、あたしがこんな目に遭わなきゃいけないの…。
イテテテ。
バッグの中身は飛び出すわ、ヒールは足から脱げてその辺に転がっている。
まぁ、盛大に転んだものの、運良く周りには人通りがなかったのが幸いだろうか。

良かった良かった…と思ったのもつかの間…。

「大丈夫か?随分と派手に転んだもんだ」

バッグの中から飛び出した化粧ポーチにお財布、携帯電話を拾い集める若い男性の影…。

「だっ、大丈夫ですからっ。ほっ、ほっといて下さいっ」

よりによって、男の人にこんな姿を見られるなんて…。
しかし、立ち上がろうにも尾てい骨を打ったからか、思うように体が動かない。

「いいのか?いつまでもそこに座っててて。急いでるんじゃなかったのか」
「はっ」

そうだった。
急いで行かなきゃ、会議に遅れちゃうっ。

「ほら、まず靴を履いて」

「じっとしてろよ。俺様が履かせてやるから」と彼はあたしの足をむんずと掴むと転がっていたヒールを履かせてくれたが、現状を忘れてしまうくらい、まるでシンデレラにでもなった気分。
だけど、俺様って自分で言う?

「足は、ひねってないみたいだな」

決して女性にしては小柄でないあたしをいとも簡単に抱き起こす彼は、間近に見るとかなりの大男。
年の頃は20代半ばくらい?履き慣らしたジーパンにパーカー姿、この時間のオフィス街には似つかわしくない上に口は悪い。
だが、顔はとにかくいい。

パンっ、パンっ。

「痛っ~い。もっと優しくしてよ」
「うるさいな。人に助けてもらって礼はないのか、礼は」
「だって、いきなりお尻を叩くから」
「叩いたんじゃない。親切にスカートに付いた砂をはらってやったんだろうが」

勝負服の一張羅のスーツ、紺色だったおかげで汚れも目立たなかったけれど、仮にも女性のお尻を力いっぱい叩くことはないでしょう。
ただでさえ、打って痛いのに…。

「一人で歩けるか?なんなら、おぶって行ってやってもいいぞ?」
「結構ですぅ」

彼は、ケラケラと声を立てて笑っている。
―――全く、なんて人なの?

そりゃあ、こういう時って一人だとものすご~く恥ずかしいけど、だからってこのBIGな態度はどうなのよ。
ドラマなんかだと、もう少し優しくしてくれるものよね?

「お世話掛けしました。さようなら」

二度と会うこともないだろうから。
っていうか、会いたくないわよね。
時計を見れば会議が始まる10分前、急がなきゃっ。



ツイていない日というのは、どこまでもツイていないもの。
遅刻こそしなかったものの、企画はボロボロ…こてんぱんに打ちのめされて、挙句の果てに後輩にいいところを持っていかれるなんて…。
コンビニ弁当を買って一人寂しく家路に着く…。

「あぁ~あ。こんな時に優しく慰めてくれる素敵な彼氏がいたらなぁ」

ニセモノでも何でもいいから、素敵な彼氏に今のあたしを『よく頑張ったね』って褒めて欲しい。

「実際、そんな男性(ひと)なんていないんだけどぉ」
「若い女の子がブツブツひとり言を言うようになったら、お仕舞いだな」

ケラケラと笑う男が約一名、あたしの顔を覗き込んでいる。

「は?!」

―――なっ。
またしても、あの男登場!!
今朝も会社の近くで会ったのだから再会も珍しいことじゃないのかもしれないけど、だからといってこうもタイミングよく現れると運命?を感じる―――わけないでしょっ!!

「何よっ、性懲りもなく人の前に」
「そういうこと言うか?今朝は俺様のおかげで会議に遅刻しなかったんだろう。企画が通らなかったのは、あんたのせいじゃない。あの部長に見る目がなかっただけだ。今回は後輩に譲ったとしても、今度はあんたが勝つさ。俺様が保障してやる」

相変わらず態度がデカイけど、会議のことも企画が通らなかったことも、どうして初対面のこの人が知ってるわけ?

「何で、あなたがそんなことまで知ってるの?」
「あ?そりゃあ、あんたのことなら何でも知ってるさ」
「知ってるって…もっ、もしかして…ス、ストーカー!!」

―――このあたしにストーカー?!
ありえない話だけど、こんなことまで知ってるなんて…。
ど、どうしよう…。

「うっ、ぎゅ…△%☆※□…」

―――離せぇ、警察呼ぶぞぉ。

「こらっ、大声出すなよ。っつうか、誰がストーカーだ。一人で泣いてんじゃないかと心配して来てやったのに」

口を塞がれ、羽交い絞めにされて手足をバタつかせるあたしを大男は宥めるように耳元で囁く。
その声は反則だ。

「え?」
「まっ、クヨクヨすんな。地球の裏側まで行っちまうくらい落ち込むけど、一晩でケロっと忘れるのがあんたのいいところだろ」
「それ…褒められてるの?」
「十分褒めてるだろ」
「ねぇ、そのわりに何でそんなに態度が大きいわけ?」
「俺様だから」

わかんないけど、この男性(ひと)といると、さっきまでの暗い気持ちが一気にどこかに吹き飛んでしまう気がする。

「心配して来てくれたんだったら、もう少し優しくしてよ」
「仰せのままに女王様」

+++

次の日、目が覚めると彼の姿はなく、夢だったのか現実に起こったことなのか、それすらわからなかったけれど、彼の言葉はあたしの心の中に残ってる。

「え~突然ですが、前部長は都合により昨日付けで退職されましたので、後任を紹介します」

―――えっ、退職?新しい部長?
部長交代の話など誰も聞いていなかったから、突然のことにどよめきが湧き上がる。

「急な人事で戸惑っている方もいらっしゃると思いますが、本日付で部長になりました一里山 隆(いちりやま たかし)です。みなさん、よろしくお願いします」

―――俺様男が、何で部長?!
何度も目を擦ってみたり、ほっぺたを抓ってみたりしたが、やっぱり目の前にいるのは彼に間違いない。
だけど、どうして…。

「潮田 紗耶香(しおた さやか)さん、よろしく」

あの笑顔は、正しく…。


To be continued...


お名前提供:一里山 隆(Takashi Ichiriyama) … yukino さま
お名前提供:潮田 紗耶香(Sayaka Shiota) … 若菜 さま

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