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コメント[ 0 ]TB[ ] 2009年05月19日00:00






ピンポーン
  ピンポォーン

玄関のブザーが鳴り響く。
―――げっ、もう帰って来ちゃったの?
遅くなるとか言ってたわりに早いわよ。
まだ、肉じゃができてないのにぃ。

ピンポーン
  ピンポォーン

「あぁ~っ、はいはい、今開けますって」

スリッパをパタパタとさせながら、紗耶香は急いで玄関のドアを開ける。

「ただいま」
「お帰りなさい。早かったのね」

こんな会話、なんだか本当の夫婦みた~いとか思いながら、彼からカバンを受け取る。

チュっ

―――なっ、チュって、何?チュって…。
いきなり、おでこにチューなんかするから、びっくりするじゃないっ。

「あぁ、面倒だから途中で抜けてきた」

「腹減ったし、早く肉じゃが食いたいしぃ」と申し訳程度のリビングとも言いがたい部屋にあるラブチェアで、ネクタイを緩めながらくつろぐ俺様男。
あぁ~ん、きっちゃな~い靴下、その辺に脱ぎ散らさないでぇ。
―――だけど、面倒だから途中で抜けてきたって…。
いいの?そんなんで。
仮にもあなたはプチョーなのにと思ったが、部長だから許されるのかも。

「美味そう、う~んいい匂い」
「ごめんね。まだ、出来てないの。もうちょっと待ってて。先にお風呂で―――」

『お風呂でも』と言いそうになって、ハっとした。
よく考えたら、この人とは夫婦どころか恋人でもないのにここまでしてあげるのはどうなのよ。
肉じゃがだって、何であたしが作らなきゃなんないわけ?

「風呂?風呂は紗耶香ちゃんと一緒に入るから、後のお楽しみに取っておくよ」
「一緒にって…誰が、あなたと一緒にお風呂に入るの!!」

―――な~にが、後のお楽しみよ。
何を言い出すのかと思えば、一緒にお風呂に入るですって?
そんなわけないでしょっ。
まったくもう。
それに人のことを気安く紗耶香ちゃん、なんて呼ぶなーっつうの。
仕方ないから冷蔵庫から発泡酒、言っておくけど、うちにはビールなんて買える余裕はないんですからね。

「じゃあ、これでも飲んでて」
「0H!サンキュー」

ブシュっ

「ぶはぁっ、仕事の後の一杯は格別だぁ」とか何とか、オジサンみたい。
あたしもあたしなんだけどね、こんな得体の知れない男をのこのこ家に入れて、肉じゃが作ってるなんて…。
だけど、慰めてくれたし、嫌いな部長もどこかへ…って、どこにやっちゃったのよ。
まさか、手に掛けたとか言うんじゃ…。
ひぇ~っ、どっ、どっ、どうしよう…。
キッチンに逃げ込んだものの、箸を持つ手が震えちゃう。
『今夜ゆっくり話そうぜ』って、いよいよ彼の正体がわかるのかしら…。

「いっただっきま~す」

「かぁっ~美味そう。待ち待った、肉・じゃ・が!!」と、まるで愛しい女性(ひと)でも見つめるような甘くとろけそうな笑顔。

「味は、保障しないから」
「大丈夫、見ただけで美味そうだもん」

料理は下手じゃないけど、人に食べさせるようなものは作ったことがないからわからない。
だいたい、これで不味かったりしたら、俺様男のことだもん。
何をするか…。

「どお?」

口にジャガイモを放り込んだまではいいが、無言のままで固まっている。
―――何よ、早く言いなさいよ。
不味いの?不味くないの?

「うっめぇ。紗耶香ちゃんの肉じゃがは、世界一だな」

ふぅ~~っ。
お世辞でもなんでも、こんなに褒めてくれるなら女として嬉しくないはずがない。
俺様男だけど、ムカつくけど、憎めないのよねぇ。

「で?何人の幸運な男が、この肉じゃがを食ったんだ?」
「えっ…」
「まさかぁ、この俺様が初めて?なんてこたあないだろうねぇ。紗耶香ちゃん?」
「なっ、ないに決まってるでしょ。みっ、みんな美味しいって言ってくれたんだからっ」

本当は図星…。
まともに男の人と付き合ったこともないあたしが、手料理なんて振舞う機会があるはずないもの。
だけど、そんなことバカ正直に言えるはずないじゃない。

「そっか、残念。紗耶香ちゃんの一番目になりたかったのになぁ」

「ほんと、うっめぇなぁ。人間ってのは、こんな美味いもんを食ってたんだ」とブツブツ言いながら、美味しそうに肉じゃがを食べている姿を見ると、まるで本物の恋人になった気になってくる。

「ねぇ、人間って。あなたは、何者なわけ?」
「イたたたたたっ、痛ってぇっての。紗耶香ちゃん、そんな…引っ張るなって」

思いっきり、両手で彼のほっぺたをぎゅうって引っ張ってみたが、人間の皮膚と変わりないように思える。
さすが、宇宙人は人間の科学を超えているってことね。
しっかし、よくここまで精巧にできたものだわ。

「この皮を剥いだら、中から宇宙人が出てくるの?」
「出てこねぇって。イててててっ、こらっ、紗耶香ちゃんっ」

顔のあっちこっちを引っ張ってみたが、どこにも継いでいる部分はなさそうだ。
ひとしきり、彼の顔を引っ張ってみたものの、赤くなっただけでつまんな~い。

「な~んだ。宇宙人じゃないんだ。つまんない」
「あのなぁ、俺がいつ宇宙人だって言った?」

「せっかくの男前な顔が台無しだろ」と引っ張られたところを手で摩る彼。

「言ってないけど、人間じゃないんだったら宇宙人しか思いつかなかったんだもん」
「まぁな、人間じゃないっていうのも、あながち否定は出来ないんだけどな」

宇宙人じゃなくて、人間じゃなくもない?
って、何?

「じゃあ、なんなの?」
「驚かない?」
「だいじょぶ」

「あのね、幽霊?」

「ゆうれい?」

ひぇぇぇぇぇぇ~~~~っ、オ・バ・ケ~~~~~~っ。


To be continued...


fukusuke.gif




arigato01.gif拍手を下さった方、がんばりましょう&続きが読みた~いボタンを押して下さった方、ありがとうございました。


 

 

ひと言を下さった方へのお返事です。


mail.gifゆり さま

■Intersectionの続きが読みた~いにひと言を下さって、ありがとうございます。
こんばんは。
いつもありがとうございます。
長い道のりでしたが、今度こそすれ違うことなく想いを伝えることが出来ました。
常務!!よく頑張りましたね。
これからは一気にといきたいところですが、そうですね常務のお父様と梨華のお母様は納得されるでしょうが…。
彼女のお父様はどうでしょう…。
変なところで意地を張ってしまったり…。
完結目指して頑張ります。
そして、■俺様騎士(ナイト)。ですが、宇宙人と迷ったんですけどね。
幽霊になってしまいました…。
成仏できなかったのか、なんなのか、書いているうちに変わってしまうと思いますが、初めてのお話ですが結構おもしろくって…。
頑張ってお話を書きたいと思いますので、よろしければお暇な時にまた遊びにいらして下さいね。
お待ちしています。

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